@茂山七五三(右)、茂山あきら(左)

京都の大蔵流狂言師・茂山千五郎家一門が顔をそろえる恒例の公演「春狂言」(4月13日東京・国立能楽堂、5月11日大阪・大槻能楽堂)に向けた記者会見が開かれ、茂山七五三と茂山あきらが、見どころを紹介、抱負を述べた。
11回目の今年は「新作、創作、異流共演…多彩な花でおもてなし。」をテーマに、和泉流との共演や、桜が舞台を彩る「さくらんぼ」と「花折」などを上演する。

七五三が「今、一番もやもやしている」のは、初役に取り組む「川上地蔵」(大阪)だと打ち明けた。
妻が目の不自由な夫を連れて霊験あらたかな川上の地蔵へお参りすると、夫の夢に地蔵が現れ、離縁を条件に開眼を約束する。長年の願いをとるか、妻を取るか選択を迫られる。夫婦の絆をしみじみと描く和泉流に伝わる古典「川上」を元に、二世茂山千之丞が改作した。
七五三は亡くなった千之丞が演じた夫役を務める。「以前に和泉流の六世野村万蔵先生の『川上』を観ました。左手を前に出して道行されるしぐさで目の悪いことをリアルに表現され、舞台に醸し出される雰囲気が良かった。千之丞が作ったのは終わり方が違いますが、ビデオを観るなどして役を噛み砕いて演じたい」と意気込みを語った。
あきらは「前回は狂言らしい笑いで終わりたいと言って作った父の思いが強く出たと思いますが、また新たなものになりそうで楽しみです」と、8年ぶりに妻役を演じる。

「さくらんぼ」は、サクランボの種を食べ、頭のてっぺんから大きな桜の木が生えた男の話。桜が満開になったと聞きつけた友達が男を囲んで酒盛りを始めるが、あまりの騒がしさに腹を立てた男は、自分の頭上の桜の木 を引き抜いてしまう。落語「あたま山」を元にした落語作家の小佐田定雄の作、あきらの演出で1997年に初演した。
あきらは「自分の頭に出来た池に飛び込むというばかばかしさを、いかに狂言らしく楽しんでいただくか、最後に工夫を凝らしました」と再演を重ねている。花見の宴を題材に謡いと小舞でにぎやかな「花折」と共に、「視覚的にも春めいたものになります」と話した。

七五三は、“ 異流共演” で東京公演では人間国宝の野村万作と「鐘の音」、大阪は名古屋の野村又三郎と「棒縛」にも挑む。
「鐘の音」は、鐘の値を聞いて来るように命じられた太郎冠者の勘違いの妙が見もの。「棒縛」は、主の留守中に酒を盗み飲まないように手を縛られた家来の太郎冠者と次郎冠者が、知恵を巡らせて酒盛りをする。両作共、和泉流の台本を使う。題名は同じでも流派によって、展開や間合いに違いがでる。
七五三は「和泉流は瞬発的に反応して動きも大きいです。驚きの方法とかは取り入れたりすることもありますね」と言い、台本を読み込み、打ち合わせも念入りに行う。あきらは「一門でする時は、舞台の合間に話すだけの時もある」とも。二人は時にユーモアを交えて話し、笑いを誘う和やかな会見となった。(敬称略)

文/前田みつ恵

「春狂言2014」 好評発売中!
【東京公演】4/13(日)13:00〜/17:00〜
【大阪公演】5/11(日)13:30〜/17:30〜
>>詳細はこちら

A「川上地蔵」(2006年上演記録より)

B新作狂言「さくらんぼ」




「能狂言ホームページ」HOMEへ戻る

Copyright(C) 1991-2012 SECTOR88 All Right Reserved. 内容を無断転用することは、著作権法上禁じられています。
セクターエイティエイト サイトマップ