みつ恵の演劇の楽しみ
(演劇ライター・前田みつ恵)

2026年8月21日


    ▽上方歌舞伎会(8月22、23日、大阪・日本橋の国立文楽劇場)
    ▽新作歌舞伎「流白浪燦星・碧翠の麗城」(9月2―26日、京都・南座)
    ▽人形浄瑠璃文楽座・太夫の竹本織太夫が十代目竹本綱太夫襲名(2028年1月初春文楽公演、2月東京)を発表




★夏恒例「上方歌舞伎会」
(8月22、23日、大阪・日本橋の国立文楽劇場)

    今年は、人形浄瑠璃として初演して以来、280年となる義太夫狂言の名作「菅原伝授手習鑑」から「加茂堤の場」と「佐太村賀の祝の場」を上演する。

    「加茂堤の場」は、主人公の菅丞相(菅原道真)の養女の苅屋姫と帝の弟の斎世親王が舎人の桜丸の手引きで密かに牛車での逢瀬を重ねるが、敵方の左大臣・藤原時平に悪用されて菅丞相の太宰府配流の原因となる。 「佐太村賀の祝の場」は、菅丞相の領地を預かる白太夫70歳の誕生日を祝う為に三つ子の兄弟とそれぞれの女房が実家に集まる。 菅丞相に仕える長男・梅王丸と時平に仕える次男・松王丸の対立や親王に仕える三男・桜丸の悲壮な結末が描かれる。片岡仁左衛門=監修・指導、中村鴈治郎、片岡孝太郎、上村吉弥=指導。

    上方歌舞伎会は1980年に発足した若手俳優有志による勉強会「若鮎の会」を前身に、上方歌舞伎の伝統を継承する俳優の勉強の場として1990年から開催してきた。

    白太夫を演じる片岡千次郎は「長閑な雰囲気で和やかなお芝居が展開されて行くんですけども、桜丸のことが気にかかっている。歌舞伎塾の卒塾公演で初めて白太夫を演じたんですが、 (片岡)秀太郎旦那が全役の見本をしてくださって一言一句というよりも一文字一文字教えて頂いた思い出がすごく残っているお芝居です。 今回は仁左衛門旦那のご指導で、もっと心の深いところを演じてお客様に伝えたい。上方歌舞伎会36回目、今後も続けられるように頑張りたい」。
    桜丸役に挑む中村翫政は「桜丸はみんなが帰ってから暖簾をくぐって出てくるんですが、桜丸の儚さがそこに集約されていると思います。松竹座が閉館して大阪での歌舞伎公演は今年はこれが最後になります。 ご指導頂いたことを僕たちが継いで、勉強して体現してしっかりと継承していきたい」。
    桜丸女房の八重を演じる上村吉太朗は「加茂堤の場では桜丸と長閑な幸せな雰囲気を出したい。 その後、お父さんのお祝いをしようという空気感になるんですが、旦那さんが帰って来ないなというのがあって、同じ役ですけど雰囲気が違うんですよね。 そこをどう演じるか難しい役です」と、それぞれ意欲を見せていた。舞踊「乗合船恵方万歳」仁左衛門=監修、藤間豊宏=振付・指導も上演する。(チラシ参照)

    千次郎ら三人は公演を前に、この芝居の舞台となる菅原道真ゆかりの佐太天神宮(大阪府守口市)で公演の成功と安全を祈願した。 道真が非業の死を遂げた50年後に里人がその徳を慕って、道真が太宰府へ左遷される途中に領地だった当地に滞在して残した自刻の木像を祀り創建した。 本殿裏にある道真が姿を移して自画像を描いたとされる「菅公水鏡の池」などを見てまわり、「想像がふくらんだ」と境内にある白太夫社にもお詣りした。 来年は菅原道真公御神退1125年で学問の神様として祀られる全国の主要な天満宮で大祭が予定されている。

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★新作歌舞伎公演「流白浪燦星(ルパン三世)・碧翠の麗城(へきすいのれいじょう)」
(9月2―26日、京都・南座)

    封建時代、諏訪の太守の春宮家の息女・瀬織姫は、鎌倉初瀬寺で静かな日々を過ごしていたが、父の死後、執権の弾正と無理やり結婚させられようとしていた。 そんな折、初瀬寺に金を盗みに入った流白浪燦星と出くわす。自由を夢見ていた瀬織姫は流白浪とともに幻の古城に秘められたお宝を巡る冒険の旅へ向かうことになる。

    モンキー・パンチの人気漫画「ルパン三世」シリーズを原作に、戸部和久の脚本・演出で歌舞伎化した第2弾。すでに3月東京、4月名古屋で上演した。
    第一弾に続いて流白浪を演じる片岡愛之助は「第一弾は悩みながら作り上げましたがすごい熱気で受け入れていただきました。今回は台本作りに時間をかけて試行錯誤を重ねて作りました。 瀬織姫の成長物語が軸になっています。アニメや映画のパロディーや歌舞伎のオマージュが随所に散りばめられていて多様な楽しみ方ができると思います。 歌舞伎の世界観を壊さずに、歌舞伎ファンの方にも楽しめて、歌舞伎が難しいと思われている方には歌舞伎観劇の入り口になればいいなと思って作っています」と、石川五エ門と二役を早変わりで演じる。
    瀬織姫役の中村米吉は「前作は客席から拝見して面白かったですが、出演する立場になってやらせていただいて大野雄二さんのテーマ曲が流れて 流白浪一味が揃った瞬間に客席のお客様の集中度というか熱量がグッと上がるのを肌で感じられて、作品の魅力、キャラクターの魅力、さらには音楽の魅力が舞台の上で融合すると 客席の熱気が上昇して演じてて楽しくて自分自身のボルテージも上がります。瀬織姫がどういう風に成長していくかがお話の軸です。 女方として、お家のためとか愛する人のために行動する古典のお姫様を踏襲しますが、瀬織姫は自分がどう生きたいかということを非常に意識して動いていく。流白浪にいざなわれながらですが 新たな自分を見つけるという部分は古典のお姫様ではないキャラクターですね。 追手から逃げるときに、着物の裾をぐっと持ち上げてテーマ曲に乗って花道をダーっと駆け抜けるみたいなことをやって見たりして、女方のセオリーは守りつつ、 お姫様なら絶対にしないことをちょっとだけ入れるようにしています」と、普段とは違う意識を持つ。
    峰不二子を市川笑也、次元大介を市川笑三郎、瀧津弾正久永を坂東彌十郎ら。

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★人形浄瑠璃文楽座・太夫の竹本織太夫が十代目竹本綱太夫襲名を発表
(2028年1月、大阪・国立文楽劇場、2月東京文楽公演)

    公益財団法人文楽協会と独立行政法人日本芸術文化振興会は、人形浄瑠璃文楽座・太夫の竹本織太夫が2028年1月の初春文楽公演で披露狂言「義経千本桜」の「道行初音旅」「河連法眼館の段」、 2月の東京文楽公演(会場、演目未定)で、十代目竹本綱太夫を襲名すると発表した。江戸時代から続く大名跡・綱太夫が17年ぶりに文楽座に復活する。

    織太夫は1975年生まれ。1983年に豊竹咲太夫に入門。豊竹咲甫太夫を名のり、翌年、文楽協会研究生となり素浄瑠璃の会で初舞台。1993年文楽初舞台を踏んだ。 2006年の平成17年度大阪舞台芸術新人賞をはじめ受賞歴も多く、2018年に八代目竹本綱太夫五十回忌追善公演で綱太夫の前名の竹本織太夫の六代目を襲名した。
    八代目綱太夫の子息の咲太夫師匠と九代目綱太夫を襲名することになった八代目の弟子の五代目竹本織太夫が今後の継承について話し合いを行う時に、 咲太夫師匠から「咲太夫と綱太夫のどちらを継ぎたいか」と問われたという。あまりに突然で硬直していると師匠から「綱太夫を継げるようにしといてやる」と言われたという。 時が過ぎ「師匠が入院中に2度断ったが3度目に親心として織太夫を継げと命じられました」と話す。
    「8年になりました。今年1月に初代綱太夫の二百五十回忌、二代目の二百二十回忌、咲太夫師匠の三回忌の追善公演をやり、代々の見台や床本などを相続していましたし、 八代目が織太夫から10年の節目、令和10年、織太夫10年、10代目綱太夫と10が重なり、このチャンスを逃すとほかにないかと思い決断しました」
    「初音の道行」は昭和の文楽三味線の名人だった織太夫の祖父の二代目鶴澤道八襲名時の披露狂言。 「河連法眼館の段」(通称・四の切)は八代目綱太夫、九代目綱太夫、初代咲太夫と綱太夫家の狂言として受け継がれてきた。 2022年4月の咲太夫文化功労者顕彰記念公演の演目だったが、咲太夫が途中休演し、「初音の道行」で忠信を語っていた織太夫が代役をつとめた。
    織太夫は「八代目の著書にある『真剣に人生を見つめ、ひたむきに人間の生き方を追求する』という理念こそが綱太夫家代々の目標であり、自身が浄瑠璃を語る上で求めている生き方です」 「綱太夫にふさわしい実力を磨いて綱太夫風を極めたい」と話した。

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